虚子百句 【六】
 座を挙げて恋ほのめくや歌かるた    『五百句』所収(明三九)
 青春真っ只中の幾組かの若者達が加わった正月団欒の風景が想起される。女性は女性同士の繋がり、男性は男性同士の繋がりで集まっているとはいっても、そこは若き男女のことである。意中を秘めての集いである。そんな雰囲気の中でいよいよ歌留多合戦がはじまる。相聞歌の数々が読み上げられる。勝負にのめり込んでいく熱気と、正月の華やいだ色香のなかで興奮は押さえ難いものとなっていく。
 この句の座の一員に読者がはまり込んだとき、その頃の青春の日々に立ち返り、初々しくも熱いこころになってくる。複数の男女の思いが複雑に交錯していることまでも連想が広がっていく。淡い初恋の思い出の場面としていつまでも消えずにいる歌留多取りであったと、この句を読んで感懐にふける読者も多いに違いない。この句は、そんな理想の世界を描いているようでもある。

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