| 虚子百句 【二】 | |
| 怒涛岩を噛む我を神かと朧の夜 『五百句』所収(明二七) | |
| 茫洋とした朧夜のなかに、天地に立ち向かうようにして岩頭に立つ一人の若者の姿がある。自画像としての作者は、目の前の大海までもが慴伏するかに見えるほど、いまは自信に満ちあふれている。 将来の大きな夢に対し、やってやるぞ、という思いで打ち砕ける波の音を聞いている。そして、ある気魄に満ちてきたとき、神宿る力が体内に漲って来る。一途な青年の底知れぬ気概が朧夜のなかで息づくのである。 異様といえば異様である。が、人の赤心をこれほどまでに表白されると、その現実離れした精神世界に疑う余地もなく読者は引きずり込まれていく。 若くしてこんな句を作る作者であってみれば、そののち、中道を外れることがあってもおかしくないが、虚子は一貫した強い信念のもとに俳諧の王道を歩みつづけ、文学としての俳句の金字塔を打ち立てるのである。虚子門からは更に数多くの俊英を排出し、歴史に残る燦たる俳句王国を築きあげたのである。 |
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